仏教祭祀儀礼の一つに、お香を焚くという行為をします。この薫香にはとても重要な意義があることをお話します。
我々人間の体も万物の根源である五大(地・水・火・風・空)で構成されています。その体を霊魂(意識)が支配することにより、色欲界(現実世界)で生命活動をしています。やがて病気と老化により生命活動を終えて人間は死を迎えます。霊魂(意識)は天頂よりゆっくりと抜けていきます。
倶舎論(アビダルマコーシャ)には『人は死後49日間は香煙を食す。』と書いてあります。死の直後で実体(肉体)を失ったばかりだから、五感(眼識・耳識・鼻識・舌識・身識)は機能しています。特に嗅覚(鼻識)は明朗でありよく働きます。更に儀軌には『香味を愉悦するなり。』とあり、香味が滋養(供養)となることが説いてあります。ですから薫香は供養の第一義(筆頭)なのです。
毎日使うお香は廉価のもので構いません。ですが祥月命日等特別の日は、ご馳走してあげたら如何でしょうか。古来より供養として優れている香木として、伽羅、沈香、白檀、等があり、有効成分としては鬱金・丁子・龍脳等があります。これら良香はとても高価なので別に保管して、特別なときに少量焚いてあげればいいと思います。線香も一本の4分の1程を折って片方に火を付け、灰の上に挿し立てないで横にそっと置きます。そうすれば燃え残ることなく最後まできれいに焚きあがります。伽羅が含まれた線香は短い少量のもので2〜3万円します。祥月命日等に限定して用い、大切に保管して無駄なく倹約して用いれば、貴方の一生で一箱あれば足りるでしょう。